別府大分マラソン2026が終了し、日本人トップは吉田祐也(GMO)が2:06:59で黒田朝日(青山学院大学)とのつばぜり合いを制したわけだが、そのほかに見ていて気になったことがあった。
「サブ10の選手が多くないか?」
今年の箱根駅伝も青山学院が大会新の総合優勝、各大学新記録多発と記録向上の波が途絶えない。これがトレーニングの進化なども大きいが、やはり一番の記録向上に寄与しているのは厚底カーボンシューズのおかげであると言わざるを得ない。
しからば、市民ランナーも厚底カーボンシューズの恩恵を受けているはずである。そこで私はサブ3.5の記録制限がある「市民ランナーの甲子園」とも呼ばれる別府大分マラソンで過去の記録と現代の記録を比較して、どのくらい市民ランナーの記録向上に厚底ランニングシューズが寄与しているのかを調べてみた。
厚底カーボンランニングシューズが出る10年前は?
まずは厚底シューズが出る前、10年前2016年の記録と2026年の記録を比較してみた。
以下の表は2016年と2026年の男子選手、サブ10(2時間10分切り)、サブ2.5(2時間30分切り)、サブ3(3時間切り)を達成した人の順位を掲載している。
驚くことに3つの項目すべてで各項目を達成している人数が増えている。
- サブ+14人
- サブ2.5+38人
- サブ3+274
競技レベル帯が同じ競技者が多い分、サブ3になるにつれて比例して達成人数が多くなっている。
| 2016年 | 2026年 | |||||
| 順位 | タイム | 順位 | タイム | 2016年比較 | ||
| サブ10 | 1 | 2:09:27 | ~ | 15 | 2:09:57 | 14 |
| サブ2.5 | 61 | 2:29:56 | ~ | 99 | 2:29:50 | 38 |
| サブ3 | 1192 | 2:59:59 | ~ | 1466 | 2:59:59 | 274 |
厚底が出てからの直近3年の記録の変化はあるのか?
以下、表は別府大分マラソンの過去3年間の別府大分マラソンの男子選手、サブ10(2時間10分切り)、サブ2.5(2時間30分切り)、サブ3(3時間切り)を達成した人の順位を掲載している。*24年は16年と比較
全ての項目が3年連続で達成者の人数が増えている。特に25年から26年にかけてサブ3達成者が格段に増えている。
| 2024年 | 2025年 | 2026年 | |||||||
| 順位 | タイム | *16年比較 | 順位 | タイム | 24年比較 | 順位 | タイム | 25年比較 | |
| サブ10 | 5 | 2:09:30 | 4 | 9 | 2:09:13 | 4 | 15 | 2:09:57 | 6 |
| サブ2.5 | 87 | 2:29:59 | 26 | 89 | 2:29:55 | 2 | 99 | 2:29:50 | 10 |
| サブ3 | 1274 | 2:59:59 | 82 | 1303 | 2:59:58 | 29 | 1466 | 2:59:59 | 163 |
なぜ、直近3年間でも記録が伸びているのか?
厚底シューズの誕生で2016年から記録が大幅に伸びているのは分かる。
ではなぜ、直近3年間でも記録が伸びているのか。
1つは厚底シューズの需要と供給が整ってきたから、もう1つは各メーカーが企業努力により良いランニングシューズを種類を豊富に生み出していることにある。
需要と供給についてだがこれはランナーたちの認識が変わった。厚底シューズが出た当初はナイキ1強で1足の単価も高く、競技者の需要も満たせるほど供給量がなかった。
しかし、今や厚底シューズは「箱根ランナーやトップレベルの競技者しか履けないシューズ」から「楽に走れてスピードも出せて記録を伸ばしてくれるシューズ」へと市民ランナーの意識が変わった。そのため市民ランナーでも厚底シューズを履く比率が上がったと考察する。
もう一つの理由は、各メーカーの企業努力により良いランニングシューズが豊富に生み出されている。当初ナイキ1強だったのは品質・性能が他メーカーが追いついておらず選択肢がなかった。しかし、今では各メーカーいづれも品質・性能ともに遜色なく同等のラインになってきていると感じる。
特にアシックス・アディダス・プーマは使い分けができるほど豊富なシリーズ展開と機能性が伸びてきている。それによって市民ランナーにも選択肢の幅が大きく広がった。また、シューズでもミッドソールの品質が良くなり、カーボン搭載ではないシューズでも記録向上の寄与となっている。
市民ランナーは裾野が広がり、競技者はよりシビアに
最後に厚底シューズの恩恵が与える影響力は今では否定しがたい事実となっている。市民ランナーにとって記録を伸ばすことはよりランニングをより楽しむ指標になる。また、ランニングシューズの選択肢が増えることもランニングを楽しむ要因の1つとなる。
競技者にとっては厚底シューズの展開が豊富になったとこでより繊細に自分の足に合う1足を選べるようになった。その一方で高いレベルの競技者数の母数が増え競技レベルは一昔前とは比較できない水準まで上がってきており、シューズ選択の重要性が更に増した。
市民ランナー目線でも観戦者目線でもこうした厚底シューズの影響は話題を呼び陸上競技全体を活性化させてくれると感じている。私のフルマラソンの自己ベストは2時間32分なのだが、ズームスピードレーサー出した記録が化石として残っているのでまたランニングを本格的に始めたら厚底シューズの恩恵の力をもらい、サブ2.5をしたいところである。