ランニングシューズの重さが**ランニングエコノミー(Running Economy: RE)**に与える影響は、多くの科学研究で明確に示されています。
結論から言うと、**シューズが重くなるとランニングエコノミーは悪化(=同じ速度で走るのに必要な酸素消費量が増える)**します。
最も広く引用されている目安多くの研究(1980年代から最近のものまで)でほぼ一致している数値は以下の通りです:
- 片足あたり100g重くなると、ランニングエコノミーが約1%悪化する
(酸素消費量が約1%増加する) - 両足合計で200g重くなると約1%の悪化
この「1% per 100g per shoe」というルールは、Frederick (1984)以来、多くの研究で再現されており、2020年代の論文でも基本的に支持されています。
具体的な研究例
- Hoogkamer et al. (2016) → 100g/足追加で3kmタイムトライアルが約0.78%遅くなる
- Fuller et al. (2015) → 研究で、シューズ重量増加と酸素コストの間に明確な正の相関
- 2020年の研究(trained runners対象) → 100g/足追加で高強度域(VT2の85-95%)でREが7-10%悪化、心拍数上昇、疲労までの時間短縮
- メタアナリシス(Fuller 2015など) → 軽いシューズや barefoot/minimalist は重いシューズより明らかに優位(SMD 0.3前後)
実際のレースへの影響の目安(概算)フルマラソン(42.195km)での参考値(あくまで理論値、重さ以外の要素は無視した場合)
| シューズ重量差(両足合計) | REへの影響 | 3時間ランナーの場合のタイム差(目安) | 4時間ランナーの場合のタイム差(目安) |
|---|---|---|---|
| +200g(100g/足) | -1% | 約1分40秒遅くなる | 約2分20秒遅くなる |
| +100g | -0.5% | 約50秒遅くなる | 約70秒遅くなる |
| -100g(軽量化) | +0.5% | 約50秒速くなる | 約70秒速くなる |
| -200g | +1% | 約1分40秒速くなる | 約2分20秒速くなる |
※実際にはカーボンプレートや反発素材の影響が加わるため、最近の厚底スーパーシューズは「重さのデメリットを上回るメリット」を出しているケースが多いです。
注意点
- 50g/足程度の差では統計的に有意な差が出にくい(多くの研究で50g追加では変化が小さく、100gで明確に悪化)
- 高強度・高速域ほど重量の悪影響が大きくなる傾向
- ただし「軽ければ必ず良い」わけではなく、クッション性・反発性・フィット感・ロッカー形状・縦方向剛性などが総合的にREを左右する
- 最近の先進シューズ(Vaporfly系など)は重くても反発・剛性で2-4%程度のRE向上を実現している
要するに、同じ他の条件なら「できるだけ軽いシューズ」を選ぶのが基本的に有利です。ただし、レース用と練習用では優先順位が変わることもあります(練習では耐久性・クッションを重視する人も多い)。軽量レーシングシューズへの移行を検討しているなら、まずは100g前後の軽量化を目指してみると体感しやすいかもしれません。