**閾値走(いきちそう)**とは、
ランニングトレーニングのひとつで、**乳酸性作業閾値(Lactate Threshold: LT)**のギリギリ手前(または周辺)のペースで、一定時間(主に20〜30分)連続して走る練習です。別名でLT走、テンポ走、Tペース走などとも呼ばれます。なぜ「閾値」なのか?
- 走っていると、筋肉でエネルギーを生み出す過程で乳酸が発生します。
- ゆっくり走っている間は、体が乳酸を素早く処理(除去)できるので、血中乳酸濃度がほとんど上がらずに済みます。
- しかしペースを上げていくと、あるポイント(閾値 = LT)で乳酸の発生量が処理能力を上回り、血中乳酸濃度が急激に上昇し始めます。
- この「急上昇し始める境目」の直前で走るのが閾値走です。
- ペースを超えると一気に乳酸が溜まり、息が上がってペース維持が難しくなりますが、**閾値走はその「ギリギリ耐えられるライン」**を狙います。
感覚的には:
- 「ややきついけど、なんとか20〜30分は維持できる」
- 「息はかなり荒くなるが、短い言葉なら会話可能」
- 「快適ではないが、崩壊しない」くらいの「快適なきつさ」
主な効果(特にマラソン・ハーフに効く)
- 乳酸処理能力の向上 → 同じペースでも乳酸が溜まりにくくなり、レース後半の失速を防ぐ
- 持続可能な速いペースの引き上げ → LT値自体が上がるので、マラソンやハーフの巡航ペースが速くなる
- スピード持久力(速く長く走る力)の強化
- ランニングエコノミーや心肺機能の向上も間接的に期待できる
- 多くの研究・実践で「マラソンタイム短縮に最も効率的なポイント練習」のひとつとされています
ペースの目安(市民ランナー向け)
- 心拍数:最大心拍数の88〜92%程度(ダニエルズのTペース基準)
- 感覚:10km全力ペースより少し遅め、ハーフマラソンペース前後〜少し速め
- 実例目安(最近の市民ランナー基準、目安なので個人差大):
| 目標タイム(フルマラソン) | 推定閾値ペース(/km) | 20分閾値走の距離目安 |
|---|---|---|
| サブ4(4:00/km前後) | 3:45〜3:55 | 5.1〜5.3km |
| サブ3.5 | 3:30〜3:40 | 5.5〜5.7km |
| サブ3 | 3:15〜3:25 | 5.9〜6.2km |
| サブ2.5〜エリート級 | 3:00以下 | 6.5km以上 |
- 初心者・中級者は「フルマラソンペース + 10〜20秒/km」くらいからスタートして調整。
- GPSウォッチ(Garmin/COROSなど)の「乳酸閾値ペース推定機能」を使えば自動で近い値が出ます。
基本的なやり方例
- ウォームアップ(ジョグ10〜15分 + 流し)
- 本番:20〜30分連続で閾値ペース維持(最初は15分から)
- クールダウン(ジョグ5〜10分)
- 頻度:週1回(高負荷なので多すぎるとオーバートレーニングのリスク)
バリエーションとして、クルーズインターバル(例: 3km閾値 + 2分ジョグ × 3〜4セット)も人気で、連続より疲労を抑えつつ総LT時間を稼げます。閾値走は地味ですが、「記録が頭打ち」になったランナーが一番伸びやすい練習です。ペースを正確に守って取り組めば、フルマラソン後半の粘りが劇的に変わります。