近年のマウンテンスポーツでは急速な高所移動が増加していますが、高度順化には時間がかかり高山病(AMS)のリスクが課題となっています。本稿では、軍事分野での短期間の低酸素曝露に関する知見を基に、市民向けの高所順化プログラム構築に向けた研究の必要性と課題を論じています。
3分でわかるポイント
- 急速な高所移動と不十分な順化が生む高山病リスクへの対策が急務である
- 軍事研究では短期間の低酸素トレーニングによるAMS発症率低下が報告されている
- 市民レベルへの応用には、適切な曝露量や効果の持続期間の検証が必要である
どんな研究?
研究デザイン:オピニオン論文(過去の知見および軍事研究の事例に基づく考察。エビデンスは抄録に基づく)
対象者:資料からは確認できません
研究方法:資料からは確認できません
論文からわかったこと
- 軍事研究(Miaoら, 2026)において、約14.2%の酸素濃度(約3,400m相当)で1日1時間・7日間のトレーニングを実施したところ、未訓練者と比較してAMS発症率が低下したことが報告されている
ランナーの練習にどう活かす?
急速な高所移動を行う際、事前の低酸素曝露が補助的な対策となる可能性がありますが、確立された段階的昇はんやガイドラインに基づく予防法の代わりにはなりません。今後の研究成果が示されるまでは、従来の予防原則を優先することが推奨されます。
研究の限界・注意点
- 軍事研究の対象者は選抜された軍人であり、一般的な民間旅行者へそのまま外挿することはできない
- 低酸素曝露の最適な用量(セッション時間や頻度など)や効果の持続期間はまだ明確になっていない
- 実験室での安静時における生体反応の改善が、実際の登はん時の発症予防を直接裏付けるわけではない
低酸素曝露には過度な酸素飽和度低下や心血管系への負担のリスクが伴うため、実施の際は適切な安全性モニタリングと明確な中止基準の設定が必要です。
よくある疑問
事前の低酸素トレーニングで高山病を完全に防げますか?
現時点の民間研究では効果や持続期間が十分に確立されておらず、完全な予防を保証するものではありません。
通常の段階的昇はんの代わりになりますか?
なりません。専門家は、あくまでガイドラインに基づく段階的な順化の補助的手段として検証されるべきであるとしています。
元論文・出典
原題:Pre-ascent hypoxic preparedness for rapid-ascent mountain sports: translating military evidence into civilian acclimatization research
著者:Wei-Long Zhang, Kai‐yun Dou, Yang Zhang
掲載誌:Frontiers in Physiology
発行:2026-09-03
※研究の紹介であり、個別の医療・栄養指導ではありません。研究対象者と自分の条件の違いに注意してください。


